Engineering 2025.05.29

BEENOSの未来を創る 攻めと守りのAI 持ち前のパッションで新たな道を切り開くAIX・釜坂さんにインタビュー

BEENOSグループのAI戦略を牽引する釜坂さん。当社サービスのユーザー体験変革から日々の業務効率化まで、多岐にわたるAI導入の最前線で活躍する釜坂さんにインタビューしました。

新しいことへの尽きない探究心

まずは入社から現在までの経歴を教えてください。
釜坂:2019年に新卒でBEENOSに入社し、ジョブローテーションを経て、新規事業への強い思いから新規事業開発チームに配属されました。そこで約4年間ほど、いくつかの新規事業の立ち上げにエンジニアやPMとして携わりました。その後、ビジネス職に転向し、米国でのビジネス立案など様々経験する中で、AI技術に心を奪われ、AIに特化した部門の立ち上げメンバーとして参画。現在はそのAIトランスフォーメーションDiv.(以下AIX)で、AIによる業務効率化やAIの活用推進などに取り組んでいます。
様々な経験をされていますが、その原動力はどこから生まれるのでしょうか?
釜坂:根底にあるのは、新しいことにワクワクするという感情です。以前担当していた新規事業開発はもちろんですが、今AIXで進めているAI導入や、既存事業であるBuyeeのユーザー体験を1から見直して、次世代の越境ECを実現するプロジェクトも一種の新規事業だと思ってます。そのため既存事業の中でもAIという新しいものを使って何かをするワクワク感は常に感じています。また、これまで新規事業に携わってきて、ゼロから何かを作る難しさを知っているからこそ、BEENOSグループの既存サービスにAIという新しい技術を掛け合わせれば、より大きなインパクトを生み出せる新しいことに挑むことができるんじゃないか、という期待もあります。あとは、もともと愛社精神なら誰にも負けないくらい、会社のことが大好きなので、会社を成長させたい、Buyeeというサービスをもっと大きくしたいという気持ちも原動力の源になっています。
最初にAIに興味を持ったきっかけは何ですか?
釜坂:2023年3月にChatGPTのAPIが出てきたことがきっかけです。APIでAIが使えるようになったことで、これは色々なことが出来そうと、すごくワクワクしたのを覚えています。
また同時期に、自社の事業について1から勉強し直そうと思い、当時入社してきた新卒と一緒に研修を受け直し、倉庫に行ったり、カスタマーサポート(以下:CS)業務を行いました。そのときに、エンジニアの実際の業務では携わることがない業務を経験したことで、AIやシステムの導入で効率化できる点が現場に数多くあると実感しました。
そこでAI事業について上司に熱弁したところ、そこまでAIが好きならやってみよう!と、その年の9月にAIXという部署が立ち上がりました。
AIXとはどのような部署ですか?
釜坂:BEENOSでのAIを活用したビジネス開発や業務改善を進めるための部署です。社員から見える範囲だとGeminiの導入を今は進めていて、仕事の効率化を進めて生産性を上げるという目的を達成するために日々励んでいます。
現在AIXで導入を進めているのはどのようなプロジェクトですか?
釜坂:いっぱいありますよ!サービスのオペレーションで利用されているものだと、荷物の海外配送に必要な配送ラベル(インボイス)をAIで作成するシステムを開発しました。このサービスは日本国内だけで完結しないので、今後の国際情勢によっては、さらに複雑になる可能性があります。 輸出入の処理を手作業で対応するのは限界があるため、AIの導入が不可欠だと考えました。 1年半ほどかけてこのAIシステムの検証を重ね、去年の10月にようやくリリース。現在では取り扱う荷物の大半をAIで作成したインボイスで配送できるようになっています。
他には、会社に来る大量のメールを、人が見なくて良いメールと見るべきメールに分けるシステムや、紙の書類のデータ化を行うシステムの開発などで業務の効率化を行なっています。

守りのAI、攻めのAI

AI導入はコストと時間の削減が目的ですか?
釜坂:AIには守りと攻めがあると思っています。
まず「守りのAI」は、コスト削減や事業継続性の確保を目的としています。
一方で、今期から始まったプロジェクトは、AIを使って顧客体験を向上させ、サービスを成長させることが目的の「攻めのAI」です。
攻めのAIを始めようと思ったきっかけを教えてください。
釜坂:やりたいと思っていても今までの技術であれば実現が難しかった業務改善を、AIというテクノロジーの力を借りながら行えばできるのでは、と感じたことがきっかけです。今までできなかったことが実現できたらサービスを成長させることにも繋がりますし、なによりとても楽しそうじゃないですか。Buyeeにはいくつか競合がありますが、競合もAI技術を取り入れてサービスを改善して行っていると思います。だからこそBuyeeも進化していかなければいけないと常に意識しています。

AIの難しさは「技術面」だけではない

AI導入の難しさとは何なのでしょうか?
釜坂:開発したAIシステムはすでにビジネスの根幹部分への組み込みも始まっているため、もし不具合がでてしまうと大きな影響が出てしまいます。なので、新しいAIシステムを開発するだけでなく、すでに開発したシステムを安定して確実に運用していくことへの責任を強く感じています。普通のプログラムなら、何か想定外の動きをした時にもコードを見れば原因の特定ができます。でも、AIはなぜその動きをしたのかの検証をするのが難しいのが課題です。例えば、先ほど話したインボイス作成のAIでは出荷してはいけない荷物は当然ストップをかけなくてはいけませんが、判断を厳しくしすぎると、本来配送できるはずの荷物も止まってしまい、物流そのものが滞ってしまったり逆にコストが上がってしまうことになります。また、国際的な輸入においてはルールを守らないとペナルティが発生することもあるため、その責任は非常に大きいです。どの程度のリスクなら許容できるかや、もしAIが不具合を起こした時に人間がカバーできるオペレーションをどう作るかなど、リスクマネジメントと効率化のバランスをとるのがすごく難しいと感じています。
あとは、僕らはAIシステムの企画と開発を行いますが、必要なのはそれだけではありません。例えば、倉庫システムなどの他システムとも連携する必要がありますし、倉庫チームやリスクマネジメントチーム、CSチームなど様々なチームとの連携が不可欠です。そのため、AIシステムの開発や運用では、システムを作るだけではなく、関わる様々な部署の方々と頻繁に会議をし、課題点の洗い出しや改善内容のすり合わせをしています。
また、今でこそ問題はありませんが、AI導入を始めた2年前は、AI活用に対して抵抗感を持つ人も少なからずいました。AIってよく分からないし、なんとなく怖い、みたいな。なので、会社全体でAI活用を推進していくためには、丁寧にコミュニケーションを重ねて、徐々に理解と信頼を得ていくというのが非常に大切だと思っています。
実際にどのようなアプローチをしたのでしょうか?
釜坂:いきなり大きく変えるのではなく、小さなことから始めて実績を積むということを意識してきました。AIでできることは無限にあると思います。だからといって、いきなり大きな問題に取り掛かるのではなく、小さいところから始めることが大切です。僕の場合は、周りの人に話を聞いて非効率だなと感じたところに対して、AIの力で助けられると思ったのが始まりです。実際にCS業務に入ってメールの返信を行った際に、適切な返信テンプレートを探すのが大変だなと思い、AIで選んで推薦するという、50行くらいの小さいプログラムを作って導入したのが最初にやったことでした。小さいところから始めて、理解を集めて広げていく、そんな意識が大事だと思います。
AI関連の技術はスピード感が、他と比べても速いように感じますが、どのように情報をキャッチアップしていますか?
釜坂:それはもう、常にアンテナを張り巡らせるしかないですね。AIの世界は変化のスピードが非常に早く、1年どころか、ほんの数週間前まで注力して開発していた機能が、GAFAMのような大企業に無償で提供されてしまう、といったことも珍しくありません。作ったものがすぐに無駄になってしまうことも多かったので、AIエンジニアとして、精神的に厳しい時期もありました。でも、作ったものが無駄になったとしても、作る中で得た知見は無駄にならないと思いますし、作った人にしかわからない学びは絶対あると思っているので、歩みを止めないことが大事だと思います。ただ最近は昔に比べて、「半年後にこの技術は絶対どこかの大企業が出してくるから、それを見越してシステムを作る」という感覚が身についてきた気がします。少し先の未来を想像して計画を立てると言う感じです。
最近注目しているAI技術はありますか?
釜坂:今注目しているのはPCをAIで操作する技術です。人間のようにAIが直接PCを操作できるようにするもので、PCを使用した簡単な事務作業を、全部AIでできるようになる可能性があります。まだAIでのPC操作の利用コストは高いですが、今後は確実に安くなっていくと考えています。今はもしかしたらAIを使わない方が安いかもしれないものでも、未来を見据えて今から研究開発していくことが重要だと思っています。競合がひしめく中で安くなるまで待とうとしてしまうと競争に遅れてしまいますし、先手を打って対策や準備をしていく必要があり、僕の仕事では今それが求められているのだと思っています。
目の前にあるものだけを見るのではなく、、少し先にどういう未来が待っているかを想像し、どこに注力するか考えて戦略を立てることに僕の価値があるのかなと思っています。
どんな人と一緒に働きたいですか?
釜坂:やりたいことがある人ですね。こんなことしてみたいという熱意さえあれば、技術は問わない。パッション人間なので(笑)。あとは、目的志向で考えられる人です。AIもそうですが、技術は何か目的を達成することや課題を解決するための手段だと思っているので、AIを使うことを目的とするのではなく、困っている人の課題を解決したいという課題解決志向を持っている人と一緒に働きたいです。